あなたは「枕花(まくらばな)」という言葉を聞いたことがありますか?
枕花とは故人と親しくしていた人が、故人の枕元に供えるために自宅へ贈るお花のことです。
ビジネスシーンでも親しい取引先の方が亡くなったときに、枕花を自宅に贈ることがあります。
あなたも、あなたの会社と親しい取引先の方が亡くなったときに、枕花を贈ることになるかもしれません。
この記事では、枕花とは何なのかという基礎知識に加えて、枕花の相場、贈り方、お店への注文の仕方などを、私が企業の秘書をしていたときの実務を基にして詳しくご紹介させていただきます。
あなたが取引先に枕花を贈ることになったときの参考にしていただければ幸いです。
枕花とは
自宅で亡くなった場合は勿論、病院など自宅以外で亡くなっても、まずは自宅に戻って故人を安置するケースが多いのですが、故人の枕元にお供えするのが枕花です。
悲しみにくれるご遺族への真っ先に届く慰めの気持ちです。
ご遺族は枕花によって、どれだけ力づけられ、有難く思うことでしょう。
取引先のご不幸の際に、札などに贈り主の社名や代表者名を入れて贈りますので、ご遺族に自社のアピールができると思います。
でも、枕花はあくまでも親しい人が贈るものですので、取引先の中でも長いお付合いの会社や、重要な取引先のご不幸の際に枕花を贈っていました。

枕花の花材と予算
枕花の主な花材
枕花を贈る際に花屋さんに「枕花をお願いします」と言えば、たいていの花屋さんは枕花に適した花材を選んでくれますので、あまり気にすることはないのですが、枕花の花の色は白か、青系統の淡い色のもので、百合、菊、カーネーションなどが多いようです。
バラなどのトゲのついた花材や香りの強いものは使用しないほうが良いそうです。
枕花に適した花材の中に故人が好きだった花があれば、その花を花材として選ぶのが良いと思います。
形態はアレンジメントが一般的です。
枕花の金額相場
取引先に贈る枕花の金額は2万円か3万円にしていました。
花屋さんに一般的な枕花の相場を聴いたことがあるのですが、会社で贈る枕花の予算は5千円~3万円のようです。
枕花の贈り方
枕花を贈るタイミング
枕花は故人の枕元にお供えするものですので、納棺前の故人がご自宅に安置されている間にお届けします。
訃報を受けてすぐですと、待っていたような印象を与えることになりますので、一呼吸おいてからお届けするのが良いと、慶弔マナーにはよく書かれていますが、私はできるだけ早く枕花の手配をするようにしていました。
何故できるだけ早く枕花の手配をしていたかといいますと、取引先からの訃報が入るのはほとんどの場合、間髪をいれずということがなく、ある程度落ち着いてからです。
ですので取引先から訃報が入ってすぐに枕花を手配して、ちょうど良いタイミングになるということを、私の秘書経験から申し上げることができます。
また、一呼吸おいてからということをあまり気にしすぎますと、競合他社の対応に遅れをとってしまう恐れがあります。
枕花の宛先と贈り主
枕花の送り先は、ご遺体が安置されている故人の自宅にします。
亡くなられた人が、取引先の人のご身内の場合、宛名は取引先の人のお名前にします。
亡くなられた人が取引先に勤めておられる本人の場合、宛先は喪主※のお名前にします。
※喪主(もしゅ)とは遺族の代表者で葬儀・葬式の主催者です
贈り主は自社の会社名・代表者の肩書と氏名を記します。
贈り主の会社名・代表者の肩書と氏名を書いた立札を枕花につけます。
枕花の届け方
枕花は花屋さんから届けてもらいます。
取引先への枕花は、弔問も兼ねて会社の代表者がご自宅にお届けするのが丁寧なのでしょうが、先方の立場に立てばそうとは言い切れないと思います。
不幸があった直後にはどの家庭でも取紛れており、人の出入りが多くなりますと応対が鬱陶しくなると思います。
花屋さんからのお届けであれば、他からの枕花も一緒に届けられるので応対回数が減りますし、枕花を設置する場所まで花屋さんに運んでもらうこともできます。

枕花の注文先
もし、あなたの会社と親しくしている花屋さんがあれば、その花屋さんに枕花を依頼するのが良いと思います。
あなたは枕花を注文することが多分あまりないと思いますので、親しい花屋さんでしたら、例えば予算的なことなど、枕花のことを聴きやすいと思いますし、あなたが気づかないことも教えてくれるかもしれません。
あなたの会社と親しくしている花屋さんがなければ、近所の花屋さんや、ネットでの注文もできますので、そちらを利用されるのも良いかと思います。
枕花の注文の仕方
枕花を注文の際には次のことを伝えます。
①お届け先の住所・氏名・電話番号
②贈り主の会社・肩書・氏名
※例えば社長名で贈る場合は、「慶弔株式会社 代表取締役社長 慶弔 太郎」というような表記です。
③枕花ということをはっきりと伝える
④予算(お店にどのような花を贈りたいのかを伝えて予算を相談することもある)
⑤立札の内容(贈り主の社名・肩書・氏名をいれるケースが多い)
⑥お届け希望の日時(花屋さんからお届け先にご都合を聴いていただくこともある)
⑦支払方法
⑧連絡先
※あなたが注文されたなら、会社名・住所・あなたと連絡がとれる電話番号・あなたの氏名などを明記します。
枕花の注文の伝達手段はメールかFaxがお薦めです。
電話ですと聴き間違いや、文字の間違いがあったりする可能性がありますし、メールやFaxでしたら、履歴として残すことができます。

枕花に関して経験したこと
枕花は有難迷惑になるかもしれない
私は大企業の社長さんが亡くなったときに、ご自宅へお手伝いに行ったことがあります。
大企業の社長をしておられた方ですので、沢山の枕花がご自宅に届けられました。
その時の花の臭気は今でも忘れられません。
枕花を贈られた方には申し訳ないのですが、とても臭かったことを覚えています。
ご遺族にとっては、沢山枕花をいただいて嬉しかったと思いますが、反面、ご遺族も花の臭いで不快感を覚えておられました。
このときから、枕花を贈るかどうかを検討するときに、枕花を贈ることによってご遺族が迷惑を受けるかもしれないということも考えるようになりました。
取引先が訃報を公表していないときの対応
取引先の社長が亡くなったという訃報が入りました。
その取引先は、社長が亡くなったことをまだ公表していませんが、とても親しくしているあなたの会社にだけ、社長が亡くなったことを知らせてくれました。
あなたの会社はすぐにご不幸のあった取引先の社長の自宅に、枕花を贈る手配にとりかかります。
以上のように、先方が訃報を公表していない状況の場合、地元の花屋さんに枕花の手配するときは注意したほうがいいと思います。
普通に花屋さんに手配しますと、花屋さんによっては故人と懇意にしていた別の会社に、「〇〇会社の○○社長が亡くなられたそうですが、おたくも枕花をお供えしませんか?」という売込みの電話をする可能性があります。
実際に私もそのような電話を花屋さんからもらったことがあります。
その場合、取引先は社長が亡くなったことを伏せているのに、花屋さんからその情報が洩れてしまいます。
そのようなことにならないように、枕花を贈ることを控えるか、贈る場合は親しい花屋さんに注文し、不幸があったことを隠している家に贈るので、他言をしないよう花屋さんに言い含めます。
最後に
枕花なんて今まで聞いたことがないと仰る方もおられると思いますが、この記事をお読みいただいて、枕花について少しでもわかっていただけたでしょうか?
枕花を取引先に贈る際に、私が実践してきましたことのポイントは次のとおりです。
・枕花の花の色は白か、青系統の淡い色のもので、バラなどのトゲのついた花材や香りの強いものは使用しない
・形態はアレンジメントが一般的
・枕花を注文するタイミングは訃報を受けてすぐに
・枕花は故人の自宅に花屋さんから届けてもらう
・枕花は親しい花屋さんに注文するのが良い
・枕花の注文の伝達手段はメールかFaxがお薦め
慶弔の基本は相手の立場になって考えることですが、弔事の際には先方は悲しみのどん底におられますので、余計に相手の気持ちを慮る(おもんばかる)ことが大切だと思います。