人が亡くなったときに遺族に弔電(ちょうでん)を送りますが、弔電とは何なのか、弔電を送るタイミングや送り先、どんな文面を誰宛に送るのか、などをご紹介します。
私は企業で秘書をしていたときに、取引先で不幸があった際に、数多くの弔電を送ってきました。
会社は退職しましたが、今でも弔電を送る機会よくあります。
この記事では、弔電について私が実践してきたことに基づいて、皆さんに詳しくご説明させていただきます。
参考にしていただければ幸せです。
弔電とは
弔電とは弔意(ちょうい:お悔やみの気持ち)を遺族などに伝えるための電報のことで、普通は喪主(もしゅ:葬式を取り仕切る人で配偶者や子供が多い)宛に打つことが一般的です。
弔電は合理的に遺族に弔意を伝えることができる反面、短い文章で遺族を思いやる気持ちを伝えなければいけないので難しい面があったり、宛名や電文ではマナーに気をつけなければなりません。
弔電を送るタイミングと送り先
弔電はお通夜が始まる前に葬儀場へ届くように送る
弔電は訃報を受けた時に、駆け付けて遺族にお悔やみを申し上げる代わりに使いますので、本来はできるだけ早く遺族に届けるために、弔電を自宅に送るのが良いのかもしれませんが、私は弔電を通夜が始まるまでに通夜の会場に届くように送っています。
自宅ではなく、通夜の会場に弔電を送る理由は次のとおりです。
・遺族は自宅では取り紛れていることがよくあるので、自宅で弔電を受取るのは迷惑かもしれない。
・弔電は葬儀で読まれることが多いので、自宅に届いた弔電が葬儀で読まれる場合は、弔電を葬儀場まで持っていかなくてはならない。
・弔電が自宅に届いた時には遺族がすでに葬儀場に向かっており、自宅は不在かもしれない。
・弔電を葬儀で読まれることが多いため、通夜までに弔電が届くと、弔電の整理が余裕をもってできる。
尚、近年は自宅で葬式を執り行うことはほとんどありませんので、葬式は葬儀場や寺院など、自宅以外の場所で執り行うことを前提にしていますが、自宅で葬式を執り行う場合は、自宅が葬儀場になりますので、自宅に弔電を送るようにします。
家族葬の場合の弔電を送るタイミングと送り先
最近では、近親者のみで葬儀を執り行う家族葬が増えてきました。
このような家族葬に弔電を送ってもいいのか、送るとしたらどこに送ればいいのかと、悩んでいる方もおられるかもしれません。
弔電は遺族に弔意を伝えるものですので、訃報を受けたのであれば家族葬であっても、遠慮することなく、弔電を送るべきだと思います。
送り先は葬式の会場がわかっている場合は葬式の会場へ、葬式の会場がわからない場合は、亡くなられた方の関係する取引先の会社に送るのが良いと思います。
但し、家族葬にされる場合は、弔電も含めて弔意をご辞退されることが多いので、弔電を辞退しておられないかを確認する必要があります。
通夜・葬儀・告別式の後で訃報を知ったときの弔電を送るタイミングと送り先
最近は亡くなったことを公表しないで、葬式が終わってから公表するケースをよく見かけます。
もし、葬式が近親者だけで営まれ、葬式のあとで取引先の関係の方の訃報を知ったときに、弔電を送るのかどうか、送る場合はどのタイミングでどこへ送るのか、悩んでしましまう人も多いのではないでしょうか。
例えば、取引先の元社長や現役の社長の場合、お別れの会や社葬を執り行われることがありますので、そのようなケースでは、お別れの会や社葬が執り行われるタイミングに合わせて、会場に送るようにします。
お別れの会や社葬が執り行われない場合は、訃報を知った直後に取引先の会社宛に弔電を送ります。

弔電の宛名
弔電の宛名の基本は喪主名
弔電の宛名を故人のお名前にすると思っておられる人もおられるかもしれませんが、弔電の宛名は喪主にするのが慶弔での常識です。
何故、宛名を喪主にするかと言いますと、次のとおりです。
・弔電は、喪主や遺族に対して弔意を表すものである。
・故人宛に送っても受取る人がこの世におられない。
・葬儀場では喪主の名前を把握しているので、宛名に喪主以外の名前を書いてしまうと、確実に受け取ってもらえない可能性がある。
喪主の宛名で注意することは、きちんとフルネームを記載することです。
葬儀場では同じ日に複数の葬式が行われることがよくありますので、名字だけですと同じ名字の人と間違われる可能性があります。
混乱を避けるために、宛名は喪主のフルネームで書くようにします。
喪主の名前がわからない場合の宛名
訃報を受けた際に、喪主の名前が入っていなかったり、喪主の名前を聴き忘れたりした場合は、葬儀場に聴いています。
亡くなったことを公表している場合は、ほとんどの場合、葬儀場への問い合わせに答えていただけます。
ただ、家族葬などの場合は、個人情報保護のために教えてもらえない可能性があります。
葬儀場から喪主の名前を聴きだせない場合の宛名は、「○○(故人の名前)様ご遺族様」とすれば良いでしょう。
弔電を送りたい相手が喪主ではない場合の宛名
例えば、取引先の社長のお父さんが亡くなり、喪主は取引先の社長ではなく、長男である社長のお兄さんです。
でも、会社の取引関係を考えると、取引先の社長宛に弔電を送りたくなりますよね。
喪主でない取引先の社長に弔電を送るような場合は、「○○(喪主の名前)様方 ○○(取引先の社長の名前)様」とすれば大丈夫です。
喪主ではない取引先の社長の名前で弔電を葬儀場に送りますと、受取ってもらえなかったり、受取りが遅くなってしまう可能性が高くなります。
会社に弔電を送る場合の宛名
取引先の社長本人や社長の身内の人が亡くなったときに、取引先の会社に弔電を送ることがあります。
どのような場面かと申しますと、葬式が全て終わってから訃報を知ったときや、家族葬で葬儀を営まれ、葬儀場に弔電を送るのが難しいときです。
会社での担当部署が、例えば総務部とか秘書室とわかっている場合は、「○○株式会社 総務部気付 ○○(喪主の名前)様」としています。
※気付とは、郵便物を相手の住所に送るのでなく、その人と関係のある所、立ち寄る所にあてて送る時に、注意を願う意味で宛名に付ける語。
担当部署がわからない場合は、取引先の会社に電話をしてどの部署に送れば良いのかを聴いています。
お別れ会や社葬などに弔電を送る場合の宛名
取引先の社長の訃報を葬式の後で知り、その取引先がお別れの会や社葬などを営まれる場合は、お別れの会や社葬の会場に弔電を送るのですが、お別れの会や社葬は会社が主催している葬儀ですので、弔電の宛先は喪主ではなく、葬儀委員長などの葬儀責任者に送れるようにしています。

会社から弔電を送る場合の差出人
私が秘書をしていた会社では、取引先の不幸への弔電は、取引先の人が自社の社長や会長のことを知らなくても、また、自社の社長や会長が葬式に出席するとしても、社長や会長の名前で送っていました。
不幸のあった取引先の人が良く知っている、自社の担当者の名前で弔電を送るのが良いのではと思われるかもしれませんが、自社の代表者の名前で弔電を送ることで、相手先にも箔がつくと思います。
また、慶弔マナーでは、弔電は通夜や葬儀・告別式に出席できないときに弔意を表すものだと書かれていますが、葬式の際の弔電拝読で自社から送られた弔電が読まれるかもしれませんので、自社の社長や会長が葬式に出席する場合でも、社長や会長名で弔電を送っていました。
表記の仕方は、「○○株式会社 代表取締役社長 ○○○○」というように、社名・役職名・氏名を入れます。
葬儀の際の弔電拝読であなたの会社から送られた弔電も読まれるかもしれませんので、読み方の難しい会社名や差出人の名前には、読み方を入れるのが良いと思います。

弔電の文面作成
弔電の文例
弔電の文章を作るのに手っ取り早いのは、弔電を注文する電報サービスの文例集をそのまま使うことです。
電報サービスが用意している文例集の中の電文を使う場合、わざわざ電文を文章で伝えなくても、文例番号を伝えるか、インターネットで弔電を手配する場合は、送りたい弔電の文例をクリックするだけで済みます。
ただ、私はいちいち電報サービスの文例集を見るのが面倒なので、予めよく使う下記のような弔電の電文を作っておき、それをコピー&ペーストをして、電報サービスに弔電を発注しています。
例えば、次のような文章です。
〇〇様のご逝去の報に接し心からお悔やみ申し上げます。
ご遺族の皆様にはお悲しみのことと拝察申し上げ、謹んでご冥福をお祈りいたします。
また、故人が社会的に功績のあったような人には、次のような文章を送っています。
〇〇様のご逝去の報に接し心からお悔やみ申し上げます。
ご遺族の皆様にはお悲しみのことと拝察申し上げ、在りし日のご遺徳を偲び謹んでご冥福をお祈りいたします。
〇〇様のところには、弔電を受け取る人から見た故人の関係を入れます。
例えば、お父さんが亡くなった場合はご尊父(そんぷ)様、お母さんが亡くなった場合はご母堂(ぼどう)様というようにです。
亡くなった人と、例えば自社の社長とがとても親しくしており、上記のようなありきたりの文章では弔意を伝えきれないと思う場合は、文例集の電文を使わず、具体的に故人との関わりのある事柄を入れて新たに電文を作ります。
例えば、「突然の訃報に接し驚いております」や「先日お会いした時はあんなにお元気でしたのに残念でなりません」などの文章を電文に入れたり、「楽しく一緒に食事をしていた時の笑顔が忘れられません」ど生前の思い出を電文に入れると、遺族に親近感を持っていただけると思います。
そして、打電した弔電の電文を記録に残すようにしています。
電文を記録に残すと同じような状況で弔電を打つ場合、以前の電文に手を加えるだけで、簡単に電文を作ることができます。
尚、電文についてはこちらの記事も参考にしてください👉受取る人に感動を与える電文の作り方を秘書の経験を基に紹介します
弔電での故人に対する敬称
弔電で故人のことを申し上げる場合は、宛先の方から見た続柄の敬称を使います。
例えば、宛先の方のお父さんのことを申し上げる場合は、「ご尊父様」などを使います。
使用例としては、「ご尊父様のご逝去の報に接し心からお悔やみ申し上げます。」という感じになります。
喪主(宛先の方)から見た故人の敬称は次の表のとおりです。
父 | ご尊父様・お父様・お父上様 |
---|---|
母 | ご母堂様・お母様・お母上様 |
妻の父 | ご岳父様・ご外父様・お父様・父上様 |
妻の母 | ご岳母様・ご外母様・お母様・母上様 |
夫の父 | お舅様・お父上様・お父様 |
夫の母 | お姑様・お母上様・お母様 |
夫 | ご主人様・旦那様 |
妻 | ご令室様・奥様・奥方様 |
息子 | ご令息様・ご子息様 |
娘 | ご令嬢様・お嬢様・ご息女様 |
祖父 | ご祖父様・おじい様・祖父君 |
祖母 | ご祖母様・おばあ様・祖母君 |
兄 | 兄上様・ご令兄様・お兄様 |
姉 | 姉上様・ご令姉様・お姉様 |
弟 | ご弟様・ご令弟様・弟様 |
妹 | お妹様・ご令妹様・妹様 |
婿養子に入った人の婿入り先のお父さんが亡くなったときに、婿養子に入った喪主に弔電を送る場合、故人の敬称がどのようにするのでしょうか。
結論は「ご尊父様」です。
婿入り先のお父さんということは、婿養子に入った人の奥さんの実父ですので、弔電の敬称は「ご岳父様」だと思う人が多いのではないでしょうか。
以前、婿養子に入っておられる取引先の社長の婿入り先のお父さんが亡くなったとき、私も「ご岳父様」という敬称を使おうと思いました。
ただ、奥さんのお父さんであっても、戸籍上はその社長の父ですので気になり、葬儀社の人に相談しましたところ、「ご尊父様」にされるのが良いと思いますとの回答でした。
参考まで補足させていただきます。
弔電のマナー
弔電で使う言葉でタブーとされているものもありますし、宗教によってもマナーがありますので、弔電を作る際に注意が必要です。
一般的なマナー
弔電では、人の死が重なる、という意味合いを避けるために、「重ね重ね」「たびたび」「しばしば」のような重ね言葉や、「また」「再び」「再三」のように繰り返しの意味を持つ言葉は避けたほうが良いそうです。
「死去」「死亡」は直接的な表現のため避けるようにし、代わりに「ご逝去(せいきょ)」という言葉がよく使われます。
また、「生きる」という言葉も直接的ですので、生きていたときを表すのであれば、「ご生前」という言葉を使うようにしています。
仏式でのマナー
仏式で営まれる場合の弔電は、「苦しむ」「迷う」「浮かばれない」という言葉の使用は避けるのが良いそうです。
仏教では、人が死ぬと、霊魂が冥途をさまよいながら輪廻転生を繰り返し、悟りを開くと、極楽浄土で成仏する、という考え方をしますので、死者の霊魂が冥途をさまよっていることを連想させる表現は避けた方が良いそうです。
神式でのマナー
弔電でよく「ご冥福をお祈りいたします」と電文が使われますが、神式で営まれる場合の弔電では「冥福」という言葉を使わない方が良いそうです。
他には「供養」「成仏」「他界」という仏教用語も避けた方が良いそうです。
人が死ぬと神になる神道と、死者が冥途などの他の世界へ旅立つとされている仏教は、死生観に大きな隔たりがありますので、神道では仏式の言葉は使用しないほうが良いようです。
神式への弔電は、「御霊の安らかな眠りをお祈り致します。」「御霊のご平安をお祈り申し上げます。」などの弔電が良いようです。
キリスト教でのマナー
キリスト教では、死を「終焉」ではなく「永遠の命の始まり」と考え、神によって天に召される「死」は、祝福すべきこととされていますので、死後の世界観を前向きに表した内容が適切だそうです。
キリスト教への弔電としては「○○様の安らかな眠りをお祈り致します。」や「○○様の天国での平安をお祈り致します。」などが適切のようです。
弔電の申し込み先
皆さんの中で、弔電をどこに申し込めば良いのかよくわからないという人もおられるのではないでしょうか。
今はいろんな電報サービスがありますので、かえって迷っている人もおられるかもしれませんね。
昔は電報の発信は電報電話局というところが一手に引き受けていましたので、今でも保守的な会社関係に電報を送るときには、電報電話局の流れをくむNTTが無難かもしれませんが、あなたの会社の状況に合致した電報サービスを選ぶのが良いと思います。
電報サービスの例としていくつかをご紹介しますので、参考にしてください。
それぞれの電報サービスのサイトをクリックしますと、弔電の文例集が見られます。


弔電を送るときに私が大失敗をしかけた話
これは私が企業の秘書をしていたときに、弔電の宛名を間違って故人の名前にしたときのお話です。
私は弔電を打ったあとで、亡くなった人の名前、逝去日、通夜・葬儀の日程、喪主、弔電の文面などをデータベースに記録を残していました。
私が勤めていた会社ではVERY CARDを利用しているのですが、VERY CARDは注文してからすぐに発注確認がメールでくるので、その内容をコピーして記録のデータベースにペーストしていました。
ある時。VERY CARDの発注確認メールを見ますとなんだか違和感があったので、よ~く見てみると、喪主ではなく亡くなった人宛に弔電を打っていたのです。
慌ててVERY CARDに電話をして、宛先名を変更していただき事なきを得ました。
このときVERY CARDのように確認メールがきていなければ、データベースにすぐに入力していなければ、とんだ失敗をしていたことになっていました。
ですから、弔電を打ち終わった後で、データベースに入力するなどをすれば、記録に残るだけではなく、弔電の発注間違いもチェックもできることになります。
最後に
弔電について説明しましたが、少しはお役に立ちましたでしょうか?
この記事のポイントは次のとおりです。
・弔電はいち早く弔意を伝える手段。
・弔電は通夜が始まるまでに通夜の会場に届くように送るのがよい。
・弔電の宛名は基本的には喪主名にする。
・弔電の文面作成の際にマナーに気をつける。
・弔電の文面のパターンを作っておくと便利。
・弔電の文面を残しておくと後々役立つ。
・弔電の発注先は自分たちに職場に適したところを選ぶ。
弔電はパターンを覚えると楽に対応できます。
しかし、パターン化された電文を使っていると、肝心の遺族を慰めるという気持ちがなくなってしまいますので、あくまでも悲しみにくれている遺族に寄り添う温かい気持ちで、対応することが大事だと思います。